事業内容

ものづくりをする中小企業として、いちはやくRE-Actionへ参加!株式会社イワタ様

ものづくりをする中小企業として、いちはやくRE-Actionへ参加!
株式会社イワタ様

【はじめに】

ものづくりをする京都の中小企業として、いちはやくRE-Action(※1)へ参加した株式会社イワタ様。
RE-Action参加のきっかけや、持続可能なものづくりにかける思いについてお伺いしました。

(※1:RE-Action)再エネ100宣言RE-Actionとは、企業、自治体、教育機関、医療機関等の団体が使用電力を100%再生可能エネルギーに転換する意思と行動を示し、再エネ100%利用を促進する新たな枠組みです。
RE100(※2)の対象とならない中小規模の企業や、企業以外の団体が参加できる日本独自の仕組みです。
参考:再エネ100宣言RE-Actionホームページ
(※2:RE100)RE100とは、企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ。対象は大企業(グローバル企業、多国籍企業、年間消費電力量が50GWh以上)です。
参考:日本の窓口は、日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)です。
参考:The Climate Group(TCG)が運営しています(英語のサイト)。

【お話をして下さった方】

株式会社イワタ
https://www.iozon.co.jp/

  • 代表取締役社長 岩田 有史 様
岩田さま
岩田さま

【取材日】

2022年12月12日(月)

【内容】

「株式会社イワタ様は、どんな会社ですか?」

寝具(ベッドやマットレス、枕など)を生産・販売しています。より良い睡眠が得られて健康になるように、素材にこだわってものづくりに取り組み、さらに持続可能な社会につながるようにサーキュラーエコノミーを推進しています。

IWATA京都本店(中京区堺町通三条上ル)
IWATA京都本店(中京区堺町通三条上ル)
寝具に使用している素材(京都本店内)
寝具に使用している素材(京都本店内)

また、作って販売するだけでなく、もう少し幅広く“良い睡眠”がプロデュースできるような活動、例えば「快眠セミナー」等もしています。

「RE-Actionに参加したきっかけは?」

ヨーロッパではサーキュラーエコノミー(※3)への取組が進んでいるということを知り、とても大切だと思いました。ものづくりをしながらサーキュラーエコノミーを推進する中で、工場などでも再生可能エネルギーを調達して使用すべきと考えるようになり、参加することにしました。

(※3:サーキュラーエコノミー)循環経済。従来の3Rの取組に加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動。資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等を目指す。
循環経済への移行は、企業の事業活動の持続可能性を高めるため、ポストコロナ時代における新たな競争力の源泉となる可能性を秘めており、現に新たなビジネスモデルの台頭が国内外で進んでいる。
参考:環境省ホームページ:https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r03/html/hj21010202.html

コロナ禍となったときに、社内であらためてパーパス(会社の存在意義)を見直しました。
イワタのパーパスは、「自然との調和を眠りから」。フィロソフィー(企業理念)は、①SLEEP(良質な眠りを提供)、②SAFE(安全かつ安心な品質)、③SASTAINABLITY(持続可能なものづくり)の3つです。

これは、東洋に古くから伝わる思想である「天人合一」に通ずるものと考えています。
天(自然や宇宙)と人(体の中の小宇宙)の両方のリズムが同調することが、健康的な暮らしに繋がるとされます。良質な睡眠も天人合一が導いてくれるのです。

ものづくりもそうで在りたいと思いました。自然のリズムとものづくりのリズムを同調させる。それには再エネ100%で作った電気が良いと思いました。
RE-Actionに参加して、再エネ電気に切り替えをして使っているということだけでなく、社内で意識が醸成されていったと感じています。

「再エネ電力の調達について」

再エネ100宣言RE-Actionホームページより:https://saiene.jp/latesttarget#RE00055
再エネ100宣言RE-Actionホームページより:https://saiene.jp/latesttarget#RE00055

再エネ100電気は、みんな電力さんから調達をしています。
みんな電力さんとは、サーキュラーエコノミー(※4)の活動を通じて知り合いになりました。
最近は、ロシア-ウクライナ情勢を受けた世界的なエネルギー価格高騰のあおりを受けて、電気の単価が値上がりしてしまって大変ですが、しかたないですね。

(※4)一般社団法人サーキュラーエコノミー・ジャパン
https://www.circulareconomy-japan.com/

「サーキュラーエコノミー推進の取組について教えてください」

粗大ごみの1位は布団です。東京都の調べでは、大型ごみのうち14~15%が布団などで、おそらく京都でも似たような割合なのではないかなと思っています。
服はメルカリなどでリユースされることもありますが、布団の多くは焼却されて埋め立てされています。また、最近の布団は様々な素材が使われているので、分別も難しい。

大切なのは、製品の長寿命化です。そのためには家庭のお手入れも重要なポイントになります。イワタの製品にはQRコードを付けていて、すぐにお手入れ方法が確認できるようにしています。
家庭のお手入れだけで難しくなってきたら、イワタの工場で仕立て直しをして再使用できるようにしています。

製品についているQRコード
製品についているQRコード

まず、そもそも製品を作る設計・プランの段階から、長寿命の製品になるように、使用時のお手入れや廃棄のことまで考えて、サーキュラーを「デザイン」しています。

≪例:枕のお手入れがしやすいデザイン≫

枕の中身は3つのパーツに分かれていて、家庭でも洗いやすいように工夫しています。二本の物干しがあるご家庭は、その上に置いて横向きに干せるとベストです。でもそれが難しい場合は、端に付けてある輪の部分を引っ掛けて干すことができるようになっています。

枕の中身
枕の中身
枕の中は3つのパーツに分かれている
枕の中は3つのパーツに分かれている
フックに引っかけて干せるようにデザインされている
フックに引っかけて干せるようにデザインされている

「長寿命に込められた思いは?」

いまの人間社会の「作る→使う→捨てる」という一方通行の消費スタイルと、地球や自然環境の循環とには乖離があると考えています。
自然環境には限界があります。自然の範囲内で人間が活動しないと、次の世代に地球を残すことができません。

「寝具の多くが輸入品の中で、国産にこだわるのは大変では?」

大変です。例えば、織屋さん、染色工場なども日本では減ってきています。
材料を調達する会社さん、それを加工する会社さん、それぞれを繋げていくのが難しい。
製品を作るだけでなく、製造工程で出る裁断くず(綿)を集めて製品にするプロジェクトもしています。そちらも、加工してくれる会社を探して繋げていくのに苦労しています。

一方で、とても素敵なコラボも生まれています。
日本の木でベッドを作っているのですが、デザイナーの八木保さんと協力して竹のベッドを作りました。岡山県の真備町はタケノコの産地でもあります。そこの竹の集成材を使って、ベッドを作りました。八木さんに、イワタのマットレスには竹が相応しい、と言っていただき、竹の加工ができる会社さんを探し、株式会社テオリさんと出会いました。竹は成長が早いので3年で使えるようになります。

竹のベッド「KAGUYA KOKOCHI」

ベッドの足は内側にひっこめて、人間の足がぶつかりにくい位置に設計
ベッドの足は内側にひっこめて、人間の足がぶつかりにくい位置に設計

「素材にも、相当こだわっておられます」

寝具は毎晩使用するものですので、安全な素材を選ぶことも大切と考えています。
イワタの製品は、すべて、世界トップレベルの安全な繊維製品の証である「OEKO-TEX認証(※5)」を受けています。

(※5:OEKO-TEX認証)350種以上の有害物質を対象とした世界最高水準の安全な製品の証明等
https://oeko-tex-japan.com/about/
OEKO-TEX認証
OEKO-TEX認証

敷き寝具の素材として、綿を超えるものは無いかと探して、見つけたのがラクダの毛(キャメル)です。

エジプトなどにいるヒトコブラクダは毛が伸びないのですが、モンゴルなどにいるフタコブラクダは体が毛で覆われます。モンゴルのラクダは冬にマイナス30℃以下にもなる過酷な環境で生活し、夏になると毛が抜け落ちます。
キャメルの繊維は、留熱・保温作用が高く、へたりにくく(=フェルト化しにくい)、吸湿性・発散性に優れているため、冬だけでなく夏もさわやかで心地よい。敷き寝具にぴったりの素材で、マットレスや敷パッド等に使用しています。

上のたくさん重ねられた素材が圧縮されて、下のマットになります。

「素材の再利用の取組について」

さっきお話した裁断くずの綿の他に、例えばラクダの毛も製造工程で「毛くず」が出てしまいます。これまでは焼却処分していましたが、奈良県で堆肥にして有機肥料にできるところが見つかりました。現在、毛くずは回収して堆肥にしています。

羽毛はリサイクルダウンの認知が広まって、ダウンジャケット等広く使われるようになってきました。羽毛ふとんを回収し、羽毛を取り出して、再利用しやすい環境になってきたと感じています。

「とてもユニークな製品もありますね」

人類進化ベッドは、チンパンジーの寝床をヒントに作った製品です。

人類進化ベッド
人類進化ベッド

もともとは、京大総合博物館で「ねむり」をテーマとした特別展の企画があったときに作ったものです。チンパンジーを研究している座馬先生から、チンパンジーのベッドを作れない?と言われたことがきっかけで、試行錯誤して開発しました。当初は展示のみの予定だったのですが、とても寝ごこちがよいものに仕上がったので製品化しました。
https://iwata-online.com/collections/bed-new

他にも、最近、寝具のサブスク(定額利用サービス)を始めました(2022年11月から開始)。初期費用が不要で、新品の寝具セットを利用することができます。2年経過したら、掛け布団を無料で洗うこともできます(送料が必要)。3年経ったら、使用していた寝具を1か月分の料金で買取するか、返却するかが選べます。気軽に利用してもらえるようにとサービスを始めました。
https://iwata-online.com/pages/unbleached-lp

ちなみに、これまで布団の洗浄は外注先にお願いしていたのですが、自社工場に洗濯機と乾燥機を導入して、社内で洗える体制が整いました。

これからも、長寿命の製品を設計し、再エネ電気を使うなど環境にも配慮してものづくりを行い、
メンテナンスのサービスも利用していただきながら出来るだけ長く使っていただき、廃棄するときも環境負荷が少なくなるような、
持続可能な活動にしていきたいと思っています。

様々な賞も受賞されています
様々な賞も受賞されています

【おわりに】取材を終えて

良いな・おもしろいなという思いを現実にしてしまう「実行力」がすごいと感じました。
「竹が良いですよ」と言われて、加工できる会社を見つけて竹ベッドを実現されたこと。ラクダの毛くずが何とかならないか、という思いから、有機肥料にできると見つけられたこと。
サーキュラーエコノミーが大切、自然の循環と調和することが大切という思いから、RE-Actionに参加し、再エネを使ったものづくりを選択されたこと……。

製造・販売・手入れに加えて、さらにより良い眠りにつながるための「快眠セミナー」や「親子の睡眠教室(子どものお昼寝や睡眠について)」などの開催も予定されています。例えば、良い睡眠につながるポイントは2つあり、一つはお布団に入る前のこと、もう一つはお布団に入ってからだそう。
再エネ電気を使い、サーキュラーエコノミーを目指すイワタさんのものづくりに、これからも注目したいと思います。

(以上)

資料ダウンロード

京都の中小企業~省エネ・再エネ・環境経営の取組事例(2023年2月発行)画像