事業内容

CO2排出量実質ゼロ店舗への挑戦!京都銀行東長岡支店様

CO2排出量実質ゼロ店舗への挑戦!
京都銀行東長岡支店様

【はじめに】

ZEBの定義がまだ国でも定まり切っていない早い時期に、東長岡支店を「CO2排出量実質ゼロを目指す店舗」に建て替えをされた京都銀行さん。
どんな環境配慮の建物にされたのか、建物のこだわりポイントや、建てた後のことについてお伺いしました。

【お話をして下さった方】

京都銀行
https://www.kyotobank.co.jp/

  • 人事総務部 管財室長 林 雅信 さま
  • 人事総務部 審議役 近藤 晃朗 さま

【取材日】

2022年9月27日(火)

【内容】

「CO2排出量ゼロ店舗」を目指した東長岡支店

京都銀行東長岡支店
京都銀行東長岡支店

2013年、京都銀行さんは東長岡支店(京都府長岡京市)を建替えされました。
設計・施工を担当した大和ハウス工業株式会社さんからの提案もあり、CO2排出量実質ゼロの店舗を目指すことになったそうです。

CO2排出量実質ゼロの建物にするためには、「建物内で使用する電気等のエネルギー量を少なくする」ことと、「発電時にCO2を出さない再生可能エネルギーを利用する」こと、この2つが必要になります。

建物内で使用するエネルギー量を減らすには、エネルギーの使用割合の高いものから対策することが効果的です。
支店で使用するエネルギーは、空調(冷暖房)と照明の割合が多いそうです。

≪空調の対策≫

空調機は当時の最新式のものを導入し、換気システムは「全熱交換器」を設置されています。
「全熱交換器」は取り込んだ空気中の熱と湿度を調整し、室内の温度や湿度が大きく変動しないように保つ機能を持っています。これによって、空気は入れ換えながらも外に出ていく熱を減らすことができるので、その分、空調のエネルギーが無駄になりません。

その他にも、春や秋などの気温がおだやかな時期に自然換気をすることで空調の運転時間を減らす「自然換気システム」や、建物外壁の外側をガラスで覆って空気の層をつくり、夏季には換気塔として熱を排熱し、冬には暖かい空気を留めることで断熱性を高め、建物内部の熱を外に逃げにくくする「ダブルスキンファサード」など、空調負荷を減らすための複数の設備を導入されました。

ダブルスキンファサード
ダブルスキンファサード
微風でも自然開閉する特殊な換気窓を使った自然換気システム
微風でも自然開閉する特殊な換気窓を使った自然換気システム

≪照明の対策≫

外部の光を建物内に上手に取り入れるための「光ダクト」や「トップライト」、「採光ブラインド」を取り付けることで、昼間は、明るさを確保するために必要な照明の量を減らすことができています。
LED照明は昼間の光に合わせて自動調光するので、必要な分しか電気を使いません。また、廊下やトイレは人感センサーにより利用時だけ点灯するようになっており、無駄な電気を使わないようになっています。
さらに、天井には「高拡散反射天井」を採用。99%超の光を拡散反射する特殊な内装材を使うことにより、取り入れた自然光や照明の光を部屋全体に拡散させて、室内が明るく感じられる工夫がされています。

LED照明と高拡散反射天井
LED照明と高拡散反射天井
光ダクト
光ダクト

照明・空調に様々な省エネ設備を導入し、さらに電気自動車(営業車として使用)も導入してガソリンから排出されるCO2も削減することで、従来型の店舗(当時の一般的設備を使用した場合)に比べると必要なエネルギーを4割程度削減、残る6割のエネルギーを太陽光発電で賄うことで、「トータルゼロの店舗」を目指されました。

CO2ゼロ店舗に挑戦したきっかけと、こだわり

ちょうどその頃、京都銀行さんでは、年に5~6店舗ほど店舗が増えている時期で、同時に、いろいろなことにチャレンジしようという機運が特に強かったそうです。
これまでにも、地元の京都の木材を店舗の内装に取り入れるなど、環境保全につながる取組を積極的にさている京都銀行さん。「CO2排出量ゼロに挑戦しよう」と決断し、大和ハウス工業株式会社さんに提案を依頼されました。

一番のこだわりポイントは、CO2排出量「ゼロ」。
必要なエネルギー量を再エネでまかなうために、屋上や駐車場への太陽光発電設置を計画されました。でも、それだけでは、発電量を計算するとトータルゼロには届かなかったそうです。
そこで、南側壁面にも太陽光発電を設置することで、CO2排出量ゼロ店舗を実現させたそうです。

南側壁面の太陽光発電パネル
南側壁面の太陽光発電パネル

もうすぐ約10年。今の様子は?

年数が経つと、どうしても設備は少しずつ老朽化していきますが、当初の計画通り現在でも多くの設備はしっかり機能しています。環境配慮型の店舗として、毎日多くのお客様が店舗を利用されています。

京都府産木材を使った店舗

東長岡支店の他にも、環境配慮を意識した店舗づくりを展開されている京都銀行さん。
例えば府庁前支店では、お客様のスペースに積極的に京都府産木材を利用されています。
海外からの輸入材ではなく地元の木材を利用することにより、木材の輸送距離(ウッドマイレージ)も短くなることから、輸送に係るCO2(ウッドマイレージCO2)削減にもつながります。それだけでなく、地元の木材を利用することは、地元の木材事業者さんの活性化につながり、さらに地元の山の手入れにもつながっていきます。
京都府産木材は、京都府内の他の店舗でも採用されており、お客様に木のぬくもりを感じてもらえるスペースになっています。

最近の取組

≪店舗の省エネ≫

お話をお伺いした林さま、近藤さまの部署では、約170か所の支店と約300か所の店舗外ATMの建物・エネルギーの管理をされています。店舗建て替えは頻繁にはありませんが、既存の店舗でもLED照明の採用や、空調設備の更新等により設備の省エネ化を順次進めていらっしゃるそうです。

≪TCFD提言への賛同≫

昨年(2021年)10月、京都銀行さんではTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明されて、2つの目標を策定されています。
1つは、2030年度までに1兆円のサステナブルファイナンスを行うこと。金融機関の本業の中で、融資等によって持続可能な社会を創り出すことへの貢献となります。
もう1つは、2030年度までに事業活動におけるCO2排出量を「2013年度比50%削減」することです。

【おわりに】取材を終えて

地元の人々が日々利用する建物が、環境に配慮されて地域の環境保全につながったり、地球温暖化防止につながる。これからのサスティナブルな社会を象徴していると感じました。今後、このような建物は京都府内でも増えていくと思います。

また、ESG投資など、持続可能な社会・脱炭素社会に向けてお金の流れも大きく変わろうとしている中で、地元の金融機関である京都銀行さんが積極的にサステナブルファイナンスに取り組んでおられることはとても頼もしく感じました。

【参考URL】

(以上)