事業内容

推進員活躍中! 「すべての命が優先される世界」〜未来世代法で未来のために今日行動する仕組みをつくる〜 河合史恵さん(NPO法人未来世代のための市民委員会代表理事)

2025年4月から新しく推進員になられた河合史恵さんは、英国のウェールズで施行されている「未来のためのウェルビーイング法(通称:未来世代法)」を日本で広めるために活動をされています。

9/6に、ウェールズで未来世代法ができるまでをまとめた翻訳本「未来のために今日行動する〜ウェールズ発・未来世代のためのウェルビーイング法ができるまで」が出版され、9/27には、その著者を呼んでのシンポジウムが京都大学で開催されます。現在それらに尽力されている河合さんにお話をお聞きしました。

 

未来世代法とは、どのような法律ですか?

「未来世代法」というのは通称で、正式には「Well-being of Future Generations Act(日本語訳:未来世代のためのウェルビーイング法)と言い、英国・ウェールズで2015年から施行されています。

国や公共機関が何かを決めるとき、その決定が今だけでなく未来の世代の幸福にもつながる選択なのかをチェックしてレポートを公表することを義務付ける法律です。

 

今取り組んでいることは何ですか?

未来世代法の日本での普及です。ウェールズの未来世代法の話を聞いた時、このしくみを日本でもやりたいと思いました。気候危機を学ぶカフェ的なオンラインセミナーで、明日香壽川先生(東北大学名誉教授)がお話されているのを聞いたのがきっかけです。ちょうど3年前の2022年7月14日。日付も覚えているくらい、私にとって強いインパクトを受けました。

今年、そのウェールズの未来世代法ができるまでの本を翻訳して出版することになりました。私自身は英語が話せないのですが、翻訳者をチームでサポートする形で進めてきて、ようやく9月6日に出版できるところまで来ました。出版や万博にあわせてウェールズから著者のジェーン・デイヴィッドソンさんも来日してくれることとなり、9月27日に京都大学でシンポジウムが開催されます。(https://jane20250927kyoto-u.peatix.com/view

ウェールズの法律を日本でそのまま適用するのは難しいと思っていますが、今回の本は、法律ができるまでのプロセス本なので、日本での応用を考えてくれる人が増えると良いなあと思っています。

その他にも、気候市民会議の開催を進めていく活動を行っています。昨年は気候市民会議に模した連続セミナーを企画しましたが、できれば京都市で正式な、くじ引き民主主義を取り入れた会議が開催されるように働きかけたいですね。

 

なぜ、未来世代法なのですか?

未来世代法によって、国の土台の仕組みを変えることにコミットができると思っています。未来世代法では、決定する政策が、現世代と未来世代の幸福につながるかをチェックします。仕組みとしてより良い未来につながる決定を選択できるようになります。

例えば、気候危機が進み、危機的な状況になってきていますが、そのことに気付いた一部の人だけが対策をしても間に合いません。気付いて行動する人を増やすには、気付くきっかけとなる情報や出会いが大切です。でもその情報に気付く余裕のない人も大勢います。

だからこそ、気付いた人にだけ頼るのではなく、社会のしくみそのものを変えていく必要があります。

未来世代法の中では、様々なテーマを取り扱いますが、特に気候変動対策は地域に密着した活動ができ、フォーカスが当てやすくシンプルなテーマでもあり、とても重要なのです。

 

未来世代法の活動で一番真ん中においていることは?

全ての命が最優先されることですね。人間だけではなく、全ての命が。人間は人間だけでは生きていけません。そして将来世代が安全に生きていくためには、気候変動も生物多様性も様々な課題を乗り越えた世界が必要です。

 

どうすればそう考えられるようになりますか?

私達は過去も未来も含めて今にいます。未来は私たちと離れた想像の上にあるのではなく、今の一瞬一瞬の一人一人の暮らし・選択や生き方、そのものの結果が現れているのであって、結局「未来は今」だよねということを一生懸命、未来世代法では伝えているんです。

私自身の大事にしていることを表現するのは難しいのですが、言語化してみると、「自己の拡張」と「時間の拡張」という言葉になりました。自己を拡張して、私とは私だけでなく、未来世代も含めたすべての世代、そしてすべての命・周りととらえ、時間を拡張して時間軸を過去や未来に広げてとらえてみることが、私にとって大事な事だと腑に落ちたんです。

例えば、電気を契約する時に1円でも安い電気を選ぶなど、得とか損とか考えるとします。時間軸を広げると今安い電気は、将来気候変動を悪化させて未来世代にとって損になると想像できます。考える軸に自己の拡張と時間の拡張を置くことで、「全ての命が最優先される」ことが大事だと行きつきました。

 

今後の活動は?

未来世代法の活動は、とても楽しくわくわくして取組みできています。こんな活動に出会えたことに感謝しています。最近活動が進化してきていると感じています。今までは、知り合いや知り合いの知り合いといった見える範囲のつながりでの活動であったのが、ここ最近では、今まで出会えていなかった人がホームページを見て連絡をくれたり、つながったりしてきています。このタイミングで本を出版できたのはとても時期が良かったと思います。

ただ、本の出版はスタートに過ぎないと思っています。今回、初版2,000部なので、2,000人の手に届くことになります。この9月にウェールズから著者も来てくれるので著者の話もリアルに聞けます。これをきっかけに、まずは知ってもらうことが重要ですが、最終的には未来を考えた選択が当然のように広まり、法律や条例として仕組みに取り入れられるように進めていきたいです。

 

 

<情報>

特定非営利活動法人 未来世代のための市民委員会

https://futuregenerations.jp/

 

未来のために今日行動する~ウェールズ発「未来世代のためのウェルビーイング法」ができるまでジェーン・デイヴィッドソン著9月6日発売

https://futuregenerations.jp/book_information/

 

ジェーン・デイヴィッドソン来日講演&シンポジウム「皆でつくろう持続可能なしくみ:未来世代法について考える」
9月27日(土)13:00~15:00京都大学百周年時計台国際交流ホール

https://futuregenerations.jp/20250927jane_kyoto/

 

Well-being of Future Generations (Wales) Act 2015

https://www.legislation.gov.uk/anaw/2015/2/enacted