推進員・堤明日香さん 「豊かな自然の中で食農体験を!」
京都府内ではたくさんの地球温暖化防止活動推進員が活躍中です。
今回は、「山城ごはん」を主宰している木津川市の推進員・堤明日香さんに取材しました。

自然豊かな鹿背山(かせやま)をフィールドに
JR木津駅から車で10分弱。脇道にちょっと入ると、木々に囲まれ小川が流れる自然豊かな別世界が現れます。少し開けた場所は、もとは田んぼだったそうです。そこにはカマドやピザ窯などがあり、竹のフェンスに囲まれた畑では野菜が育てられていました。奥側には竹林も見え、鳥の声があちこちから聞こえます。

「周りの街の音はあまり聞こえないんです。ちょっと飛行機の音が聞こえるぐらい。最近はここ鹿背山(かせやま)のフィールドを中心に活動しています。畑で野菜作りと収穫体験をして、自然の中での遊びを楽しんでいます」と堤さん。
堤さんは6~7年前から山城ごはんというグループで食農体験の取組をされています。参加者は毎回10組程度の親子。木津川市を中心に、奈良から来られることもあるとか。
「月に2回程度、野菜のお世話や収穫をしています。きゅうりやトマト、じゃがいもや玉ねぎなど、親子で一緒に体験してもらっています。」

今年(2026年)の3月までは、収穫した野菜を使ってこの場所でご飯づくりをしていたそうです。カレーや豚汁などを作って食べる他にも、森の中でアート作家の方と作品づくりをしたり、竹で楽器を作るなどのワークも月に1回行っていました。
ところが昨年、少し離れたところで熊が目撃されました。イベントの集客も少し悪くなり、料理はしないことになったそうです。
畑の活動「かせやまびより」
4月からは「かせやまびより」という名前で、予約制で月に2回程度、畑の活動をされています。Instagramや木津川市の広報誌、チラシなどで参加者をつのり、親子20名程度で活動します。
「収穫作業など、10分ぐらいで飽きてしまう子どもさんもいますが、川遊びなど自然の中で楽しく遊んでくれています。川は人気ですね。初めての参加者さんにも長靴持参を伝えています。私にとって、ここは桃源郷みたいに魅力的な場所。ブルーベリーもあと1か月ぐらいで収穫できます。とても甘いですよ。山草もたくさんあるので、下ばかり見て歩くときもあります。」

鹿背山では複数の市民グループがそれぞれの場所で活動しているそうです。畑があるこの場所は、鹿背山竹ネットの場所。畑のふだんの野菜のお世話は竹ネットの会長さんが手伝ってくださっているそうです。堤さんも竹ネットに所属されています。
春のタケノコ狩りは人気だそうです。タケノコは豊作の「表年」と不作の「裏年」が1年ごとに繰り返されます。今年は裏年でしたが、表年だった昨年は竹ネットからタケノコを出荷するぐらいの豊作だったそう。タケノコが一番おいしいのは孟宗竹で、他に破竹や真竹も生えているそうです。真竹は竹細工に使われるとのこと。
「ECO学校」「竹チップコンポスト体験」
堤さんは昨年、新しい企画をはじめました。食と環境をテーマに、体験を交えた講座「ECO学校」です。4回実施されました。
「今年は範囲を広げて、月1回実施します。基本は鹿背山で行い、真夏や真冬などは加茂駅近くの福祉施設を開放してくださるので使わせてもらうことになりました。自然観察やネイチャーゲーム、竹工作、アートの先生によるワークなどを予定しています。同じ木津川市の推進員の西澤さんに食をテーマにしたワークもしてもらおうと思っています。リピーターの参加者も多いです。」
「かせやまびよりやECO学校の参加者に、家でできる取り組みとして竹チップコンポストを紹介しています。コンポストのポイントなどを紹介して、竹チップを持ち帰ってもらっています。」


イベント参加が活動のきっかけに
堤さんの活動のきっかけについてお聞きしました。
「鹿背山の南側をフィールドに『鹿背山元気プロジェクト』というボランティアグループが、森を整備したり滑り台を作ったりなどの活動をされています。木津川市の広報誌でそれを知って、当時1~2歳ぐらいだった子どもを連れて参加しました。子育てが大変だった時期に『ピザ食べて行ってね』『ゆっくりしてね』と声をかけてもらって、嬉しかったんです。それから子どもと鹿背山の活動に参加するようになり、自分の方が夢中に。子どもたち小学校高学年ぐらいまでは一緒に来てくれていましたが、現在は高2と中2。最近は付き合ってくれなくなってきました。」
鹿背山は、万葉集にもその名が詠まれている昔ながらの名所で、現在は木津川市が管理をしています。市は鹿背山を整備するために市民グループを作り、ルールを設けて、複数の団体が鹿背山の整備や管理・活用できるようにしています。
街から簡単にアクセスできるのに、自然が豊か。川の上流にシカのツノが落ちていることもあれば、イノシシが地面を掘り起こした跡も(土に体をこすりつけるそうです)。他にも、アライグマやハクビシンもいて、畑では小動物の被害を受けることも。
ブルーベリーの他にもスイカを作ったり、柿が実をつけたり。はちみつをとったり、原木にしいたけの菌を植え付けたりなど、様々な体験ができます。

「きっかけとしては、他にも、たまたまアースデーのイベントに参加をしたらすごく楽しくて。丹後海と星の見える丘公園でのイベントだったのですが、場所も内容も良かったんです。そこから環境のイベントを調べていくようになりました。木津川市のこどもエコクラブにも参加して、私の方が子どもより夢中になり、現在もサポーターの会(※)に参加しています。」
(※)木津川市こどもエコクラブサポーターの会:地域や学校などで環境活動をする『こどもエコクラブ』を応援するための大人のボランティアの会。
「私以外にも、子どもよりも楽しくなってしまう大人の方は、けっこういらっしゃいます。例えば竹を切るという作業だけで、子どもは夢中になりますが、親も夢中になるんです。お父さんに切ってもらって子どもたちに応援してもらったりすると盛り上がりますよ。シイタケの菌打ちも、子どもがある程度作業した後に、お父さんお母さんがとても頑張ってやってくれます。」
地域活動の原点
子どものころは、特に自然に興味があったわけではない、と堤さん。ただ、独身時代から、野菜など食べるものには気を付けたいと思っていたそうです。
奈良県出身の堤さんは結婚を機に木津川市に。鹿背山で自然に触れて、これからも自然豊かなこの場所にいたいと思うようになったとのこと。活動を通じて知り合いも増えたそうです。
「加茂女(かもめ)の代表・曽我さんに教わったことが、私の地域活動の原点です。加茂女は竹林整備などをしていて、竹を食べるという活動をされています。竹を食べるというのは新鮮で、驚きでした。山城地域の『ちーびず推進員』として4年間ほど加茂女で働きました。地域活動と環境のつながりについて、教わることが多かったです。
また、そのころ、山城広域振興局が山城の野菜をPRするために『やましろ産ごちそうさんプラットホーム』を作り、誘われてそこに参加しました。独立して山城ごはんを作り、プラットホームで知り合った農家さんと一緒に野菜の地産地消を進める活動をしました。ホームページを作ったり、出展して野菜や加工品を販売したり。地産野菜は環境にもいいし、おいしいし、農家さんの応援にもなります。」
食農体験の機会を増やしたい
堤さんは小学校の出前授業にも参加されています。取材当日も、小学校の科学クラブの子どもたちの再エネの授業のサポートをされたそうです。授業の中でも、体験活動で子どもたちがイキイキと楽しんでいるのを見ると嬉しくなるそうです。出前授業のお手伝いなどもできるだけ参加するようにされているそうです。
週の半分ぐらいは事務の仕事をしている堤さん。仕事はやめられないけれども、本当は地域活動をもっと増やしたいと思っているそうです。
「イベントをすると、集客が大変なときもあるし、ケガなどがあるとそれも大変です。でも、楽しそうにしてくれているのを見ると、やって良かったなあと思います。お母さんたちも楽しそうで嬉しいです。参加者のお母さんが手伝ってくれることがあります。嬉しいし、ありがたい。一方でここに来ている時ぐらいはゆっくりしてもらいたいな、という気持ちもあります。」

自分がやりたいことをやっているんです、と堤さん。
「子どもができて、環境のことを考えて。将来どんどん暑くなっていくのはダメだと思うし、自分でも家でみどりのカーテンやコンポストなど取り組んでいます。これからも食農体験の機会を増やしていきたいし、娘が大人になって、娘の子どもにも自然体験やエコ生活を伝えてくれたらなと思っています。」


