事業内容

特集 セミナー「地域にエネルギーを取り戻す」ダイジェスト

2019年6月15日に、榎原友樹氏(株式会社 E-konzal代表取締役)よりお話をいただきました。講演する榎原さん

※株式会社 E-konzal
http://www.e-konzal.co.jp/
榎原友樹氏
http://www.e-konzal.co.jp/company/message.html

○エネルギーで損する日本人

日本は、化石燃料の輸入に年間20兆円近く使っています。国家予算のうち消費税が17兆円、所得税が18兆円ですから、これに匹敵する額を、海外に支払っているわけです。これは、まるで穴の開いたバケツに一生懸命水を入れるようなもの。せっかく自動車や電子機器など、日本の技術をいかした産業で外貨を稼いでも、エネルギーを得るためにお金がどんどん流出していくのです。このまま何もしなければ、これがずっと続きます。

試算によれば、私たちが支払うエネルギー費用は、一人当たりおよそ年間20万円。仮に人口10万人の自治体ならば、年間200億円にもなります。この一部でも自分たちのサービスにして地域でまわすことができたら、どうなるでしょう。これが我々の発想の原点です。

○地域主導型再生可能エネルギー

風、太陽光、木などの地域資源を使ってエネルギーを地域内で賄うことができれば、エネルギー費用をその地域で循環させられます。実際、日本全国で、再生可能エネルギーを活用することで地域が元気になる事例が出てきています。ただし、他地域の大企業が設置しても、地元にはあまりお金は落ちません。私たちの研究の結果、できる限り外注せず地元でやるのが良いことを、数字で示せるようになっています。

2050年くらいには温室効果ガス排出が「ゼロ」の社会にしなければならない。簡単に言うとエネルギーはほぼ再エネということです。これは、地域に再エネが嫌だという人がたくさんいたら絶対にできません。再エネを地域主導型でやるということは、地域にお金が回って元気になるだけでなく、「みんなにとっていいエネルギーだね」と言われないと困るのです。

○日本版シュタットベルケの可能性と課題

シュタットベルケという言葉を聞いたことがある方、手を挙げていただけますか? 多いですね。すごい! シュタットベルケはドイツ語です。公共サービスを、民間と公共が一緒になって提供していこうというものです。例えば、ドイツでは電気事業は儲かります。一方、公共交通は儲かりません。温水プールなどは予算が先に切られがちになるそうです。そこで、赤字事業のサービスもきちんと運営していくために、稼げる事業から融通する。そうして全体として、地域の公共サービスを安定的に提供するのです。

日本でも電力小売りが自由化となりました。日本版シュタットベルケは、電力小売りを中心に地域で色々なサービスをやっていくのが基本的なコンセプトです。今までは、地域でエネルギーといえば、「再エネで発電する」という事ばかりを考えていました。農業で例えると、お米を作る、野菜を作る。しかしそれだけではなかなか稼げない。これからは、例えば野菜を加工して美味しいメニューとしてレストランで提供する。そうすると高く売れる。これはある意味で六次産業化です。電力も、単に売るだけでなく、地域でお金がまわる、きちんとしたサービスをパッケージ化する、いわいる六次産業の考え方に近いと思います。電気供給だけでなく、地域ならではのサービスを追加しましょう、ということです。

地域サービスとして、どんな貢献があるのかをいくつか見てみます。「いこま市民パワー」では小学校の登下校見守りサービスをしています。子どもが校門を通ったら親にメールが届きます。「みやまスマートエネルギー」では高齢者の見守りサービスをしています。いつもと電気の使用パターンが違うときにあらかじめ登録している人へお知らせが届くのです。また、地元の健康増進のために、健康体操をジム運営会社と連携して実施しています。「加賀っ子応援でんき」は18歳以下の子どもと同居していると電気代がすごく安くなります。子育てを支援できるのです。

また、電力消費量の詳細なデータがあれば、これは省エネに活用できます。電力会社は電気を売っているので、本気の省エネは難しい。でも自治体新電力ならば、これを本気でできる。そして、それは「地域のエネルギーの漏れを防ぐ」ことになり、住民のためになるのです。

良いことをいっぱい言いましたが、もちろん課題もあります。むしろ課題だらけです。大手電力会社との価格競争ではなかなか勝てませんし、自前の電源も不足しています。多くの再エネを調整するノウハウも必要ですし、収益確保と地域サービスの「鶏と卵」問題をどうやって解決するのかも大きな課題です。

しかし、私はアメリカのケネディ大統領のスピーチを思い起こします。当時は宇宙開発においてロシアに先行されていました。ケネディ大統領は、アポロ計画に関してこうスピーチしたのです。「この時代の宇宙長距離探査の分野で、これほど人類にとって素晴らしく、重要な宇宙計画はないだろう。またこれ以上に遂行が困難で費用のかかる計画もないだろう。我々は月に行くことを決めた。簡単だからではない。難しいからこそ行くのだ」と。

温暖化対策・地域を元気にしていくのはとても難しいことだけれども、これこそフロンティアで、これができたら日本は、世界は、変わるだろうと思います。

○数字だけの計画ではなく、生のデータを活用した事業を

E-konzalでは国内外の地域エネルギー計画策定に関与しています。京都市など国内自治体の他、ベトナム、マレーシア、インドネシア、ブータンなどの都市で温暖化防止の計画を作ってきました。

国内の状況をみると、エネルギーの使用状況については、都道府県別の統計はあるのですが、基礎自治体は、それを人口等で案分をしていることが多いのが現状です。つまり、最先端の取り組みをした場合でも、その効果は統計に現れづらいのです。逆に、もしおおよそのCO2排出状況を掴みたいだけであれば、それぞれの基礎自治体が排出量を計算するのはもったいないと思います。

そこで部門別に詳細な推計ができる無料のソフトを作りウェブで公開しました。特に小さな自治体さんには、ぜひこのソフトを使ってもらい、計画づくりではなく、具体的な対策に時間とお金を投入してほしいと思います。もちろん自治体だけでなく、市民の方にも、お住まいの自治体の現状を把握するために使っていただきたいです。

E-konzal 全基礎自治体のエネルギー消費量・エネルギー起源CO2排出量データベース
http://www.e-konzal.co.jp/e-co2/

このようにデータが「按分」でしか得にくい中、生データは極めて貴重です。例えば地域の世帯の5%でも生データを取れれば、按分のデータからわからないデータがわかり、対策も検証できるようになります。生のデータが得られる地域新電力という手段は、自治体にとっては、本来捨てることのできないものなのです。

なお、地域で再エネを普及させるにあたり自治体で考えないといけないのが、「再エネを増やして何をしたいのか」を明確にすることです。ほとんど描けてないのが現状です。CO2を減らしたいのか、産業育成がしたいのか、地域ブランドをつくりたいのか、地域経済を循環させたいのか、財政収入を向上させたいのか。目的を明確にして、効果を測らなければなりません。何を実現したいのかが決まれば、やることも決まり、定量的に分析をしていくことができます。

○京都が持つ「エネルギー・ガバナンス」のポテンシャル

先週ドイツで、大変興味深い事例を教えてもらいました。デンマークのソンダーボルグという町では、2029年までに正味の温室効果ガス排出量をゼロにするという目標を掲げています。面白いのは、彼らの計画策定のプロセスです。キックオフワークショップに市民(ステークホルダー)をがっと集めて、市民に考えさせるんです。住民や事業者を巻き込んで、「2029年ゼロにするために、あなたが考えて!決めて!」と徹底的に議論してもらう。市長が説明して、ワーキンググループで考えてもらって、5つのイニシアティブを提案させて、計画を作りました。これがうまいこと動いているんです。

いままでのように行政だけで計画を立てるのではなく、市民や、思いがある方、関係する会社の方が中心になって一緒にシナリオを作り、進めていく、そういう時代が来るんだなあと思いました。そして、このような取り組み方で地域のエネルギー政策を進められるポテンシャルがあるのが、これまでパートナーシップによる取組を積み重ねてきた京都なのではないかと私は思います。