推進員・細谷みつ子さん 「生ごみをきっかけにした地域の循環の場づくり」
京都府内ではたくさんの地球温暖化防止活動推進員が活躍中です。
今回は、「一般社団法人これから」で活動している向日市の推進員・細谷みつ子さんに取材しました。
■体験イベントを開催
1月18日、気持ちよく晴れた日曜日の午前。
駐車場の端に設置された木製デッキとビニールハウスに、たくさんの人が集まっておしゃべりに花を咲かせていました。
ビニールハウス内では参加者にコーヒーがふるまわれていました。再生可能エネルギーであるバイオガスでお湯を沸かして、喫茶店の元マスターが個人の好みに合わせて珈琲を淹れてくださっています。他にも、手作りのジャムやお菓子が並べられています。参加者は思い思いにハウス内に立ち寄り、植物に囲まれながら、ほっこりした雰囲気で楽しそうにお話されています。

木製デッキには大きなバイオガスプラントが設置されています。その横にはバイオガス液肥で作った大根やさつまいもなどが入った箱やリサイクル本などが並べられ、ミニフリーマーケットのようです。
参加者はデッキに置かれたベンチに座って輪をつくり、ゆるやかにイベントが始まりました。

(※コンポストとは、生ごみなどの有機物を入れると、微生物の作用で発酵・分解させて堆肥にすることができる容器のこと。生ごみを減らし、堆肥などの形で再利用することができます)
今回のコンポストは大きめのフェルトバッグ。すっきりとした見た目で、台所や玄関に置いてあっても違和感がありません。
竹チップが入ったフェルトバッグをのぞき込みながら説明が始まります。スタッフは一般社団法人これからのメンバー。推進員の細谷みつ子さんもメンバーの一人です。
「コンポストは土でする方法など、いろいろとあります。竹でやってみたところ、これが思った以上に分解してくれるんです。夏場は発酵が活発で50℃ぐらいの温度になりました。冬はゆっくり分解します」
写真の左側は、夏からコンポストとして使っているもので、右側は、竹パウダーを入れただけの、これから始めるものです。
まず、生ごみコンポストの実践方法について、具体的にわかりやすく説明がありました。
コンポスト基材である竹パウダーに燻炭や米ぬかや水を混ぜて、ぎゅっと握ったら固まるけどすぐほぐれるぐらいにすることや、しっかり混ぜて空気に触れさせること。燻炭は、炭にある微細な穴が微生物のすみかになることや、米ぬかは微生物のエサになること。生ごみを入れて混ぜて、表面に生ごみが見えないように基材をかぶせること、等々。
「堆肥として使いたいときは、どうしたらいいですか?」
「まだ発酵している状態のものを使うと、植物の根を痛めるのでよくないんです。生ごみの投入をやめて熟成させ、微生物の活動が落ち着いて、温度が上がらなくなってから使うのが良いですよ」
参加者からの疑問や質問にも丁寧なお返事がされていきます。
なぜこのイベントをしたのか、細谷さんが説明します。
「今回は竹パウダーコンポストのスタートキットを無料でみなさんにお渡しさせていただきます。実験だと思って、続くかどうか、とりあえずやってみてください。コンポストをやってみたら、うまくいって微生物が頑張っているなあと思ったり、調子が悪いなあなど、愛着も出てきます。もし試してみて何か悩みが出てきたら相談してください。やめたくなっても大丈夫です。まずは体験してみて、ちょっとでも生ごみを減らしていただければと思っています」
次に、竹パウダーコンポストの体験者として実践報告をしたのは、土のめぐみという団体で活動をしている谷本於規光(たにもと おきみつ)さん。谷本さんも実は推進員です。
谷本さんは2つのコンポストで実験をされました。1つは、土のめぐみでこれまで使ってきた従来のコンポスト(特製堆肥の基をいれたもの)。もう1つは、竹パウダーのコンポスト(特製堆肥の基の一部を竹パウダーに入れ替えたもの)です。
その2つのコンポストに台所から出る生ごみを半分ずつ同じように投入した結果について、実物を見せながら報告されていました。
竹パウダーが入った堆肥の基は、従来品に比べ少し撹拌しにくいが、発酵性が良く堆肥化に適しているようだ、とのことです。

「生ごみは90%が水分。燃えにくいとゴミ処理施設で燃料が使われることもあり、地球温暖化の原因のCO2が出てしまいます。ごみに出す前に水分を飛ばしておくだけでもCO2を減らせるし、コンポストに取り組むと生ごみが減って、さらに生ごみ堆肥は畑で使うことができる」と谷本さん。
コンポストでは生ごみの水分が悪さをすることが多いが、堆肥の基が水分をうまいぐあいに吸収してくれることや、生ごみを入れすぎると発酵が遅れること。外に置く場合は虫がやってくるので、洗濯ネット等で対策をしていること。40℃以上で発酵臭がするが、いい匂いと感じる人と嫌がる人がいる。今回配布されたフェルトバッグ同等品を使用しており、これにチャックをつけるとバッグの開け閉めが容易で、虫侵入対策にもなることなど、実体験に基づく具体的なお話をされていました。
「この温度計はどこで売っているの?」「ホームセンターで2,000円ぐらいから売っていますよ」
「米ぬかは、全体に混ぜるのではなく、生ごみにかけて混ぜるといいですよ。発酵温度が上がらない時など調子が悪いときに混ぜます」
など、興味津々な参加者と活発なやり取りがされていました。
■環境省の実証事業と「地域循環ラボ」
今回、スタートキットを無料で配布できたのは、環境省の実証事業の一環として実施しているからとのこと。細谷さんが説明します。
「一般社団法人これからでは、NPO法人木野環境さんとともに環境省の実証事業を受託して、この場所(地域循環ラボ)にバイオガスプラントを設置しました。ここでは、生ごみをメタン菌で発酵させてバイオガスとバイオガス液肥を作っています。向日市民100名のモニターを募集して、生ごみを持ってきてもらっています」

プラントに生ごみを投入すると、プラント内に入れてあるメタン菌が嫌気性発酵をして、バイオガス(主な燃焼成分としてはメタンCH4)と液肥を作ることができます。
発酵するために温度を上げる必要があるのですが太陽熱を利用しています。
実証期間中は時間を決めてスタッフが生ごみの受け入れや説明をされています。
このプラントでは、生ごみを1日7kg処理ができるそうです。今は冬なので投入量を4kgぐらいにしているとか。バイオガスは青い袋に溜められており、ガスコンロでお湯を沸かすことに使われています。
700gの生ごみから、コップ1杯分のお湯を沸かす分のバイオガスを作ることができます。
液肥はビニールハウス内でも使用しますが、家庭菜園や学校の花壇、近隣農家さんの農場など、希望する方に使ってもらっています。
「最初はモニターが集まるか心配しました。でも予定の100人以上の方がモニターになってくださいました。
バイオガスプラントに入れられる生ごみの量は決まっているのですが、みなさんのご協力でそれ以上に集まる日もあります。そこで、プラントに入りきらないものはキエーロ(※)というコンポストに入れています。これも基材は竹パウダーです。例えば、小アジ50匹分の頭、骨、内臓を持ってこられたことがありますが、夏場だったので、キエーロに入れたら4日間ぐらいで消えました。
成熟後は堆肥として、野菜の栽培にも使えることが分かりました」

(※)キエーロとは、神奈川県にお住まいの松本さんという方が考案されたコンポスト。
詳しくはこちら(外部リンク)
プランタの右側は竹パウダーのキエーロを成熟させた堆肥を使い、左側は普通の土だけだそうです。
生ごみが液肥や堆肥として畑などで使われて、また野菜ができるという循環が生まれています。
「残念ながら、実証事業は今年度まで。このラボも1月末でいったん終了となります。この竹パウダーコンポストは家庭でも手軽に取り組めるので、今回みなさんにご紹介しました。向日市はゼロカーボンを目指すといっています。コンポストをご家庭でもやっていただいて、身近なところから一緒に取り組んでいただければと思っています」
参加者の方は、疑問点を尋ねたり、心配事を相談したり、日ごろ気を付けていることをお話したりしながら、竹パウダーコンポストのスタートキットを受け取っていました。
「ここに来るのを楽しみにしていたので、なくなってしまうのが残念です」
「日常にできることをやってみますね」
イベントはなごやかな雰囲気で終わりました。
■実証事業をすることになったきっかけ
細谷さんに、実証事業を始めたきっかけについて伺いました。
「向日市内のタウンミーティングに参加したときに、ごみ問題の話をしていて、生ごみやし尿からバイオガスや液肥をつくって地域純化している地域の例をNPO法人木野環境(※)さんに教えてもらいました。環境省の実証事業があることも木野環境さんからお聞きして、申請をするために5人のメンバーで一般社団法人を立ち上げました。それが2024年の2月ごろです。
バイオガスプラントは、木野環境さんからお借りしているものになるので、実証事業が終わった後はお返しします。別の場所でやりたい方がいたら、また貸出することも可能と聞いています」
(※)NPO法人木野環境(外部リンク)
「実証事業の期間はもう終わってしまいますが、良かったことがいろいろとあります。
モニターを100人集めるのも、通りがかった人たちが、何をしているの?と聞いてくれたりして、そんなに苦労せずに集めることができました。向日市のみなさんはどんな感じかなあと思っていましたが、話をしてみると、ごみのこと気になっていたという方や、自然を残していかないとね、ということを、皆さんが思っているんだなあ、と。
何軒かの農家さんと知り合いになれたこともよかったです」
「この活動は、日常でできることを具体的に提案ができる。生ごみを分けて、持って行くことで、地域の循環につながる。
日々の生活のなかでやれることの提案ができれば、市民の方が行動できる。
専門家からの情報も必要かもしれないけれども、いかに市民を巻き込むかが大切だと思います」
実際に取り組みを進めるにあたって、地域循環ラボの場所を無人で運営することもできたそうですが、あえて有人ですることにしたそうです。
「生ごみをここに持ってくるのを楽しみにしてくださるモニターさんがいたり、近所の子どもがおもしろがってごみの投入をやりたい!と来てくれたり、ハウスで育てたトマトを摘んだりなどの体験もしてくれました。地域の方とのすてきな交流の場を持つことができました。
びっくりしたのが、夏休みの自由研究でバイオガスプラントについて調べて模造紙2枚ぐらいにまとめてくださった子どもさんがいて、感激しました」
■具体的な提案をして、一緒に活動を
細谷さんの活動をはじめたきっかけについてお聞きしました。
「子どものころ、大原野の小畑川(おばたがわ。桂川へ流れる川)で遊んでいたのですが、小学4年生ぐらいのときに、洛西ニュータウンができるのに伴い護岸工事がされて、コンクリートで固められてしまったんです。親からは、人間が大勢住むから仕方がないね、と言われて。でも、そこが崩れるのを見てしまったんです。2回も。父の、自然は人間の思う通りにならないからなあという言葉が心に残っているんです。
自然を守るという言葉を聞くが、守られているのは人間だなと思います」
自然に対して、怖さや畏敬の念を感じておられるそうです。
「生活クラブ京都エル・コープ(生協)の理事を20年させてもらいました。産地を見に行ったり、生産者とお話をしたり。学んだり、体験したことがたくさんあります。役をやめたときに、これは還元しないとバチがあたるなあと思って。
このラボでいろいろな方としゃべれるのが良くて、モニターさんとお話することで学ぶことも多かったです。こういった取り組みを企業さんたちもしてくれたらいいと思うんですけれども。」
伝えるだけでなく、日常できることを具体的に提案して、一緒にすることで市民をまきこんでいくことが大切だと思います、と細谷さん。
今後の活動についてお聞きしました。
「実証事業が終わったあとは、今回できたつながりを活かして、畑を借りて体験農園のような活動ができたらなあと思っています。キエーロを持って行って、向日市の竹を利用した竹パウダーコンポストで生ごみを減らして、堆肥を作り、それを農園で使って、野菜を作る。地域の循環につながる活動を続けたいです。地域ごとに、エリアごとにこういう活動ができたら理想的ですよね」
実証事業「地域循環ラボ」の説明動画(木野環境)(外部リンク)











