事業内容

特集 エコライフ専門家に聞く「2030年までに家庭部門からのCO2排出量66%削減は可能か?」

政府が4月に掲げた「2030年度に13年度比46%削減」の目標に向け、
「地球温暖化対策計画」の改訂案の中では、排出量を家庭部門で66%、産業部門は37%減らすといった内訳を示しています。
家庭部門の新たな目標であるCO2排出量66%削減は可能か、ひのでやエコライフ研究所の鈴木靖文氏にお聞きしました。


 

図1 家庭部門のCO2排出量の推移と将来目標(1990年=100)
図1 家庭部門のCO2排出量の推移と将来目標(1990年=100)

 

家庭部門のCO2排出量を、2030年までに2013年比で66%削減する(3分の1まで減らす)という目標が提示されました。
2019年を基準とすると56%減になります。
今までの延長線とは全く異なる、大転換が求められます。

これだけの極端な削減は無茶に思えますが、できないこともありません。
最近10年くらいで、生活にメリットのある実現メニューがそろってきました。
転換のポイントは、なるべく効率的にすること、そして再生可能エネルギーを使うことです。

 

1)効率的にする

以前は「省エネ」と言われていたことですが、世界的には「効率よく」という表現が一般的になっています。
がまんするというイメージでなく、生活にプラスになることですし、損していることに気が付かないのはもったいないといった視点です。

シャワーの流しっぱなしを止めたり、断熱不足でロスしていた熱を逃がさないように工夫したり、使っていない部屋のテレビや照明を止めたり、など工夫で無駄を減らすことができます。
エネルギーを役立たない部分に使って、捨ててしまうのはもったいない話です。つい習慣でしている生活を見直すと、1~2割くらい無駄に使っている部分があります。

冷蔵庫やテレビなど家電製品、給湯機器など省エネ型に買換えることも有効です。
今すぐ取り組むという話でありませんが、今後10年以内には多くの機器が買換えの時期を迎えると思います。
その時に、間違えずに効率の高いものを選んでください。
我が家でも15年ぶりに冷蔵庫を買換えましたが、検針票で毎月の電気代が前年と比べて500~1000円程度下がっていました。
冷蔵庫は最近15年で消費電力が半分以下と大きく改善されています。

図2 冷蔵庫のサイズ別消費電力量2006年と2021年の比較
図2 冷蔵庫のサイズ別消費電力量2006年と2021年の比較

 

この期間に、ちょうど断熱住宅の新築ができるタイミングが来たひとはラッキーです。
家庭のCO2排出の2割弱を占める冷暖房の消費を削減しながら快適に過ごすことができ、健康面でのプラスになります。
新築の機会はなくても、リフォームで効果的な断熱工事をすることもできます。
住まいは建てたら終わりではなく、メンテナンスしながらより住みやすい住宅に育て、長持ちさせることが大切です。
建物の断熱は、国の温暖化対策の鍵として重要度が増しています。

 

2)再生可能エネルギー

自分の家の屋根に太陽光パネルを設置し、自分で発電することができます。
日当たりがいいのであれば、電気代削減で設置費用の元が取れる上、環境負荷を減らすことになります。

またCO2排出をしない電力メニューを選んで購入することもできます。
世の中の太陽光や風力発電装置の一部をレンタルするようなものです。
通常の電力メニューより少し電気代が高くなっていますが、再生可能エネルギーを世の中で増やすことにも貢献します。
(再エネ100%の電力メニューがある会社一覧:京都市・再エネ電気プラン紹介ホームページ)

 

3)各家庭で選択できること

家庭ごとに暮らし方も違いますから、削減のしかたにも当然違いがあります。
自分にあったCO2排出量を知りたい方のために、環境省から「うちエコ診断WEBサービスhttps://webapp.uchieco-shindan.jp/」が公開されました(2021年4月)。
参考までに、京都府での平均的な世帯として、CO2削減効果の大きなものを並べましたので、できそうな対策を選んでみてください。

 

想定:京都府在住、3人世帯
想定:京都府在住、3人世帯

 

このように66%削減さらには脱炭素も可能なメニューは出そろっており、実際すでに脱炭素を実現した家庭も増えています。

これを日本全体で達成するためには、どう広げていくのかが課題になります。
残念ながらまだ現状では動きがにぶく、経済を含めた社会転換のうねりを作っていくことが必要になります。
2009年に市販が開始されたLED照明が10年でほかの照明を駆逐してしまったような動きを作れるといいのですが。