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【特集】体験1:山見拓さん(自分たちで断熱リフォーム)

体験1:山見拓さん(自分たちで断熱リフォーム)
体験2:山本和仁さん(窓、浴槽、天井の断熱改修)
体験3:村山修一さん(断熱を重視して建替え)


 

■体験1■ 自分達で断熱リフォームをした山見拓さん

 

  • まず、山見さんのご自宅について教えてください

私は有限会社ひのでやエコライフ研究所で研究員をしています。会社では家庭の省エネ診断のツールづくりなどを業務でやっています。個人でも自分達でできることをDIY的にやっているので、紹介します。

築70年ぐらいの古い町家を改修して住み始め、もう4年ほど経ちます。その町家は10年の間、時が止まっていた空き家でした。家財道具から何から全部ありました。「町家にあった改修をして、快適な暖かく涼しいお家にしたいね。できることをやってみよう」と始めました。置いてあるものを出すところから、なるべく自分達で手を入れて、シェアハウスの他の住民や友達も巻き込んで作業して、時には大工さんに来てもらって行いました。

 

  • どんな改修をされてこられたんですか?

古い町家なので、木造で土壁です。そこで、壁に羊毛断熱をすることにしました。
冬は断熱が大切です。それから、山本さんもおっしゃっていましたが、窓の断熱はとっても大切なので、家のすべての窓に手作りの木枠の内窓を付けました。

 

暖房はペレットストーブを使っています。ひと冬に700kgぐらい(11~3月の5ヵ月間・1日あたり平均4.67kg:1日あたりの費用242円程度)使っています。2階に設置しているので、ペレットの入った袋(10~20kg)を定期的に2階に持って上がります。いまは大丈夫だけど、体がしんどくなるとこの作業は大変かもしれません。

夏は日光を遮りたいので、遮熱のためにブドウを植えてグリーンカーテンにしています。ブドウができて食べられます。ただ、放っておくと毛虫にやられます。葉っぱが食べられておいしいブドウができない。薬はなるべく使いたくないので、毎日トングで毛虫を取りまくってなんとか葉っぱを維持しています。
他にも以下のようなことをしています。

【太陽光パネル】
発電をして、一部はバッテリーの電源にためてオフグリッドで使うということをやったり、中古で買った大きめのパネルは100Vに換えて家庭のコンセントで使えるような形で使ったりしています。使っている電気の100%ではないけど、一部を担ってくれています。

【雨水タンク】
自分たちで色々と付けています。すべてのタンクを合わせたら2トンぐらい貯めています。水やりにも使っていますが、実験的にトイレに流して使うということもしています。屋根に水を撒いたら涼しくなるかなということもやってみました。確かに瓦は冷えるが、室内で涼しさを感じられるほどではなかったです。

【太陽熱温水器】
ちょうど育休を取り、時間ができたので、ヒートルパネルという温水器のキットを使って1日1時間ずつコツコツ作業をして自作しました。春夏秋とお風呂のお湯をイイ感じで温めることができました。寒くなってきた最近でも、10℃ぐらいは温度を上げてくれます。

 

  • 壁の羊毛断熱をDIYでされたことを教えてください。

こちらは住み始める前(改修時)にやりました。
うちは土壁です。土壁というのは、水分を含めて呼吸をしています。色々と調べた中で、羊毛が一番吸放湿性も良いし自然素材なので、相性が良いと思い、これにしました。
聞いた話なのですが、万が一、水害があったり雨漏りとかで水に濡れてしまっても、干して乾かせばまた使えるらしいんです。自然素材だし、劣化して使えなくなるまで繰り返し使えるのは面白いと思いました。

 

 

羊毛の断熱材はロール状になっています。このロールの幅に合わせて大工さんに枠を組んでもらいました(このロール幅は他の一般的な断熱材と同じ幅)。その後、自分達で必要な長さにロールをハサミでチョキチョキと切って、タッカー(大きなホッチキス)でパチパチと端を止めていき、隙間がないようにする作業をしました。
羊毛は100mmと200mmの厚みがあります。100mmを入れた部分が多く、ちょっと寒そうなところは厚い方を入れました。

 

  • 次は、内窓の設置について教えてください。どうやって手作りされたのですか?

木製の内窓は、住み始めた後に設置しました。

とても窓が多い家で、大きい窓も多いんです。一度、山本さんのお話にもあったスペーシアの見積をしましたが、全ての窓をするには値段が高すぎる。そこで、木枠を作り、ポリカーボネートという中空の板を入れて内窓を作りました。
ちゃんとスライドができるようにレール用の溝は材木屋さんに加工してもらいました。4mの加工済みの長い木材を購入して、窓枠の長さを測って線を引く人、それを切る人、くみ上げる人というように、分担作業をしました。工場みたいな感じでどんどん作りました。
微妙にずれたりいがんだりするので、最後は現場でカンナをかけたり調整したりは必要でした。

断熱性能について調べました。うちでは、普通のガラス窓に、4mmの中空ポリカーボネートを入れた木枠内窓の二重を合わせると、熱の出入りのしやすさは計算上3ぐらいです。これは普通のペアガラス窓と同じぐらいの性能です。当初の一枚ガラス窓だけだと6なので、熱の出入りは半分ぐらいになり、逃げにくくなりました(数字は熱貫流率[W/(m2・K)])。

設置後、一つトラブルがありました。杉を使ったので、時間が経って木材が乾燥すると縮みます。ポリカーボネートの板は余裕をもってはめたので大丈夫だけど、一部の場所では、木枠ごと内窓が外れてしまいました。
サッシ上下に、細長い角材(割り箸のようなイメージ)を使ってレールにしています。このレールの角材を足して長くすることによって、外れないように工夫しました。

 

 

  • 改修の効果はいかがですか?

ガラス窓の前に座っていても、ヒンヤリしなくなりました。これは内窓だけでなく羊毛断熱も含めての効果だと思いますが、明らかに局所不快的なものは減りました。窓で冷やされた空気が足元に降りてきてスース―するという感じも明らかに減りました。
2階では、ペレットストーブを最初は強めに運転させますが、1時間ぐらいで十分暖かくなるので最低の出力にして温度を維持します。23時ぐらいにストーブをオフにしますが、その時の室温は21℃ぐらい。朝6時頃は、15℃ぐらいになります。
断熱をしていなかったら、もっと冷えて10℃を切る日もあると思いますので、古い町家にしては頑張って熱を保持していると思います。

 

  • 最後に一言

我が家がいま年間でどれぐらいCO2を出しているのかを比較してみました。
日本では2013年の排出量から、2030年までに46%減にすることが目標です。
2013年の京都市3人世帯の電気・ガスのCO2排出量平均は1.24トン。2020年の我が家の電気ガスを見ると、ちょうど46%減ぐらいでした。(2021年10月22日に閣議決定された地球温暖化対策計画では、家庭部門の目標値は66%減)
ただ、電気は良いのですが、うちはガスの使用が平均よりも多い。土鍋でご飯を炊くなど料理で使うガスも多いので、また見直したいなと思っています。(現在小さな子どもがいて毎日お風呂に入るため、給湯に使うガスの量は平均世帯よりも多い可能性があります)
他にも、ペレットストーブは、熱を煙突から出しているからモッタイナイなとか、熱が逃げている場所をサーモカメラで見たりして、例えばお風呂で利用できないかな、DIYで熱回収できないかな、なんてことを楽しんで考えています。
楽しい暮らしをしながらCO2を減らしていくことを、もっとしていきたいなと思っています。

 


 

■新築住宅に関する参考情報

『住宅の断熱・気密まるわかりBOOK』

WEB版はこちらからご覧いただけます。

https://danmitsu.kcfca.or.jp/